LOVES


Liar



最近、おれ達の朝は早い。

「アキラ、お待たせ!」
首から下げたタオルで額に流れる汗を拭いながら。
「お疲れ。ほら」
木陰で休んでいるアキラに駆け寄り、冷えたスポーツドリンクのボトルを受け取る。

冬の寒さがひと段落ついて、桜の枝がピンク色に色付く季節。
暖かくなった空気に後押しされて、まだ人気の無い近所の公園で喉を潤す。

「サンキュ。っん〜!生き返る〜」
「大袈裟だな」
「そう?」

呆れたように言うアキラに笑顔で返しながら、空のボトルを二つ共ゴミ箱へ投げ入れた。


………何でこんな事してるかって?
それは───。


「アキラ、早かったな」
「……疲れたから途中で引き返してきた」
「あ、そう…」

早朝ランニングが、最近のおれ達の日課になってるから。
冬の間特に外で身体を動かす事も無かったし、身体が鈍らないようにって……おれから誘ったんだ。

……最初は面倒だって渋っていたアキラだけど。

「どうかした?」
「いや…、何でもない」
そよぐ春風に銀色に光る綺麗な髪を靡かせて、アキラが微笑う。

「何だよ、教えてよ」
「何でもない」
「ちぇっ。……アキラのケチ」
「何だよ」
「な、何でもないよ…」
「………」


───何でもないなんて、嘘ばっかり。


(…気付いてないんだろうな)

すごく気持ち良さそうな顔、してるじゃないか。
柔らかに上げた口元がそう言ってる。
ほんと素直じゃないよな、アキラは。
……もうちょっと、こう…さ?

「………」
「………」


………それならおれだって、アキラに嘘ついてみようかな。


「…綺麗だな」
「え…?」
「ううん、桜が綺麗だなって」
「…そうだな」


───嘘だよ。


「へへっ」
「何だよ、気持ち悪いな」


アキラの微笑った顔、すごくすごく綺麗だって思ってる。
満開の桜より……ずっと。




………そして本当はもう一つ、ずっと前からアキラに大きな嘘をついているって事……知らないんだろうな。




「そろそろ帰ろうか」
「そうだな」









"鈍らないように"なんて、嘘。


本当は。









「……!おいっ…」
「良いだろ、誰も見てないんだから」

触れた指先。
すぐに離れて───そして、また。

「アキラ。手、繋ごう」

差し出す掌に、今度は。

「……。今日だけ、だからな」
「うん」

添えて重なり…指を絡めて握り返してくれる。









不器用なアキラも可愛いけれど。

やっぱり、たまには………さ。







「アキラの手、あったかい」
「……お前もな」







………こんな、素直なアキラが見たかったんだ。




Liar / 嘘つき